第4話〜好きという偽り 傷つく心〜




昨日のキスのことを考えてた。

私らしくない。

一人の男に夢中になりそうだ何て・・・。

そんなことを考えながら夕食を口にする。

今日は、鍋焼きうどんだ。

熱くって何度も冷ましながら食べる。

テレビは見てる。

焦点の再放送。

まぁ、見たことなかったから飽きずに楽しんでた。

「あははは・・・は〜」

笑えるのも見れば明るくなれるって。

わざと楽しめば楽しくなれるって思ってきた。

でも、そんな事効かなかった。

「好きなのかな?総代のこと。」

ご飯が進まらない。

恋煩い?

な〜んて思ったりもしてた。



「今日はこれで終わり!解散!」

帰りの会が終わってた。

もう、冬休みだ。

だから、こんなに早くに終わる。

なんで忘れてたんだろう?

冬休みがあるってこと。

私にとって、冬休みなんておばさんに会うためだけにあるもの。

1年に一回のきっかけだった。

「おっ〜と。忘れてた!守本!職員室に来なさい」

生徒がほとんど帰り始めたころ、私は呼ばれた。

みんなはまた笑ってる。

もう、沢山だ。

教師も。生徒も。

いっそのこと死んでしまいたい。

そう思う人生だった。

教室を出る。

先生の言うとおり職員室に行く。

「なんでしょうか?」

溜め息交じりの情けない声。

「守本、頭よかったよな?」

「いいえ。」

「成績はいいほうだろう?」

「いいえ。」

「まぁ、聞いてくれ!」

「なんでしょうか?」

「今度、先生な〜結婚式があって、その、クラス代表でお祝いの言葉を書いてきて欲しいんだ。」

「どうして私なんですか?」

「頭いいから。」

「理由になってませんよ。」

「まぁ、書くだけでいい。」

「はっ?」

「読んでくれるこはもういるから。」

嫌な感じ。

ただ私は文章を書くだけ。

それを読む子がどれだけいい気分をするのだろう?

私は、先生を祝福する気なんてない。

「でも、私先生が嫌いですよ。」

「知ってる。」

「こんな私に書かせていいんですか?」

「いくら、俺のことを嫌っていてもそういう式を壊したりするような奴じゃないだろ?」

「はっ?」

「どういて偽るんだ?」

「なんのことです?」

「殺人鬼。って呼ばれてる理由。本当は誰も殺せないくせに。」

「何言ってるんですか?先生には関係のないことです。」

「担任だけど?」

「休んでも何もしないくせに?」

「あはははは。」

笑いで逃げられた。

先生の本音は殺人鬼と呼ばれる理由が知りたいだけ。

そんなこと、一生はなしてやるもんか!

「じゃ、失礼します。」

「どうぞよろしく。」

いいなんて、書きますなんて言ってないのに原稿用紙渡された。

壊してやりたい。

でも、壊せない。

私は、自分も嫌いだ。



学校から、家に帰ればすぐに考える。

「結婚おめでとうございますは必須よね〜。」

など、真剣に考えてしまうのだ。

どうせ、私が書いたことなんてみんな分からない。

読む時だって、私が書いたのを予想してデタラメに読んでしまえば私のせい。

みんな、みんな、信用できない。

(まぁ、先生は信じてないからいっか。)

そうして、すらすら書いていく祝福の言葉。

あとは封筒に入れるだけ。

そっと入れる。

自分の字じゃないような感じで丁寧に書いて。

そうすれば、なんでもいい気がしてきた。

影で何かしてる奴。

そう思われ始めたあの日からそういう人になってやろうと思ってたっけ?

ふと、昔を思い出した。



事件のあった翌日。

学校はサボり。

ギャルみたいなかっこうして男と遊んだりした。

でも、やばい系はいかなかった。

だって、中2ですから。

ちなみに、私強かったから。

夜中も遊んでおばさんに迷惑かけた。

何度も泣くおばさん見て泣かせてるのは自分だと気づいた。

自分が恥ずかしかった。

だから、別居した。

これ以上迷惑はかけられないと思って。

でも、電話がよく来た。

会いに来なさいとか、心配してるのよとか。

みんな留守電に入ってる。

それから、正月だけ会いに行くと決めた。

こんな、ヤンキーみたいな私と、おばさんは親子みたいに思われたくなかったから。

まぁ、会いに行ったときはすごく喜んでくれたけどすごく怒られた。

それでも嬉しくて、また、泣いた。

わんわん泣いた。



な〜んて昔の夢を見ていた。

懐かしいあの時。

若いな〜って自分で思った。



真っ暗な暗闇の世界に日が差し込んできた。

太陽みたいな君。

総代が・・・好き。

でも、太陽を闇に沈めるわけにはいかなかった。

いつまでも、みんなのために光って欲しかった。



「紗〜夜」

朝の4時。

外は真っ暗。

そんな時、声が聞こえた。

私はパジャマのまま玄関を開ける。

「おっはよう。俺とデートしない?」

そこに居たのは総代。

・・・総代!?

パニクッタ私はドアを閉めた。

「パジャマ姿も可愛いね♪」

ドア越しに恥ずかしくなるような甘い声が聞こえる。

「何で居るのよ!」

できるだけ。近所迷惑にならない程度に小声で話した。

「だ〜か〜らデート誘いに来たの。」

「非常識!」

「なんで?」

「今何時だと思ってるのよ!」

「午前4時。」

「人が来ていい時間じゃないでしょ!」

「まぁまぁ、一緒に行かないと大声出しちゃうよ♪」

また、何かたくらんでる声。

大声出されたらたまったもんじゃない。

慌てて私は返事をした。

「はいはい。行きますよ。」

投げやりな声ですぐさま着替える。

寒いから、膝下のスカートと適当に上は着て、ジャンバーで隠した。

 ガチャッ

とドアと開き鍵を閉めた。

嬉しそうな顔してる。

「おまたせ。」

「今日も可愛い。」

ドキドキだ。

総代の言葉にいつもドキドキさせられた。

「今日はどこ行くの?」

「ラブホ。」

「本気で聞いてるの。どこ?」

「映画館。」

「なんでこんなに早くから行くのよ!」

「そのほうがいろいろ出来るでしょ?」

「はぁ?」

聞き返しても何も言わない。

ずるいやつだな〜と心底思った。

また、電車。

また、私は座ってやつは立ってる。

こんな時間によく動いてるもんだ。

人は誰も・・・いないわけじゃなかった。

「眠いんだけど。」

「寝れば。」

「非常識。こんなところで寝るの恥ずかしいよ。」

「俺が隠してあげる。だいたいそんなに人いないよ。」

「アンタに見られるのが恥ずかしいのよ。」

「なんで?」

「よだれとか垂らしたら恥ずかしいじゃない。」

「見ないって。それに、映画で寝られたら困るから今寝ちゃいな。」

「映画で寝たほうがアンタに見られなさそう。」

「そこまで俺に見られたくないの?」

「うん。」

「どうして?」

「・・・・どうしてかな?」

腕を組んで考えた。

答えは見つからない。

「まぁ、いいや。」

もう仕方ない。

そう思ってまぶたを閉じた。

寝る準備まんまん。

すっと意識が遠くなる。

私は、無事に寝ることが出来たかな?



寝顔を見てた。

年上の君。

好きじゃない。

ただ、気になるだけ。

薄く潤う君の唇。

初めてのキスのときはかさかさの乾燥してた唇。

今は、こんなにもツヤツヤ。

触れてみたかった。

顔を近づけた。

君は優しい吐息で寝たまま。

そっと触れた。

柔らかい感触。

誰にも見られない。

誰にもさせない。

自分のものにしたいと思っている自分が居た。

「好きなのかな〜?」

離した直後つぶやいた声は君には届かない。

そっとまぶたが開いた。

「って!顔近い!キスした!」

起きた瞬間わーわー騒ぐ。

「してないよ。」

「うそ!本当にしてない!?」

「してない。しようと思っただけ。」

「そう。ならいい・・・ってよくない!」

真っ赤な顔。

ドキドキしてる自分。

本当はもう気づいてる。

誰のおかげで今が楽しいのか。

色が付き始めてるのか。

それでも、隠した。

「ねぇ、好きかも知れないっていったらどうする?」

「誰のこと?」

「総代のこと。」

うわべ使いの目で彼を見る。

けっこう無表情。

「さぁ?」

「好き。どうしようもなく好き。」

自然と口からこぼれた。

「もし、それが本当なら、今はまだ、そういう風に思えない。」

ヅキッ。

胸の痛む音。

「やっや〜ね。何真顔で言ってんの?冗談だよ。」

「そう。よかった。もし本当ならこれからの映画見るとき気まずくなるもんな。」

あははと笑う私。

何時までこのままで居られるかな?



色がさしてきた。

その色がまた黒に戻りそう。

このまま、.黒いままかもしれない。








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