第3話〜昔の友達 君へのオモイ〜







閉じ込めるのは色がついていくのが怖いから?

あの日のことを思い出すから?



どれも当たってる。

どちらも違ってる。


私は、私自身が分からないんだ。




ずる休みの次の日。

学校ではにぎやかな声。

私なんぞが入れる雰囲気ではなかった。

「ねぇ、守本さん?」

嫌な響き。

何かを絶対たくらんでる声だ。

「何ですか?」

睨みを利かせながら相手の目を見る。

「殺人鬼って聞くけど本当に殺したの?」

口だけ笑って嫌な感じ。

思い出したくないところを興味本位で聞いてくる。

「だったら何だって言うの?」

「って事は、否定しないの?」

「別に、貴方にどう思われてもいいもの。」

「何で殺したの?」

「しらないわ。」

「うそつきね〜守本さんて。」

くすくす笑って口に手を当てる。

女王様気取り。

ほんとムカつく。

「昨日、サボったでしょ?」

「ええ。」

即答。

あまりに即答だったため相手はひるんだ。

そこを私は突付く。

「だから?サボって何が悪いの?言っておくけど私貴方より頭いいの!バカに言われたくない。」

「なっ!」

「本当のことでしょ?そうやって遊んでるからバカになるのよ。私には関わらないほうが身のためよ。じゃないと死ぬわよ。」

「・・・ふん!そうやって脅してるといいわ!怖くなんてないんだから!」

バタバタ後ろを振り向きながら教室を出て行く。

「そうやって、私から離れていきなさい。」

誰にもいえないことがある。

誰にもいわないことがある。

言いたい。

でも、言えない。

口にするのが怖いの。

また、居なくなっていくのが怖いの。

「ねぇ友美?私なんかに関わらなければよかったね。」

今は亡き友人に囁く。

彼女は優しい子だった。


彼女、有本 友美。

誰からも人気な子でいじめられるような子じゃなかった。

どちらかといえばそういう子達を支える子。

私とは正反対だった。

彼女はきっと私にとっては真っ白い存在なのだ。

そして、対の私。

出会いなんて、なかった。

ただ、彼女が話しかけてきただけ。

「紗夜ちゃん。」

珍しさにおびえてふとこわばる顔。

彼女は苦手だった。

「駄目!駄目!あたしに関わらないで!」

おびえた恐怖により教室を駆け出した。

このころは中学1年生。

そんなにいじめはなかったが嫌われてた。

いろんな子に避けられてきた。

だから、この子も怖かった。

いつか、怖い顔で微笑んであたしを裏切ることが。

人なんて、信じられなかった。

その理由なんて、口にしたくもなかった。

「あっ!紗夜ちゃん!」

出る際響く彼女の声。

怖かった。

何もかも。

すべて。

世界も、この世も私にとっては恐怖。

支えてくれてた人なんていない。

母親はいろんな男と子供を作り、父親もいろんな女と子供を作り。

顔だって覚えていなかった。

そんなあたしを育てたのだ、親戚のおばさん。

子供が産めない彼女にとってあたしは本当のこのように可愛がられた。

「どうしたの?泣いちゃって?」

おばさんの声。

気づけば学校を抜け出して公園に居た。

「おばさん。」

溜め息のような声。

気づけば泣いていた。

「あたし、人が怖い。笑う笑顔が怖いの。」

たんたんとつぶやいていく。

声が小さくなって聞こえなくてもおばちゃんは支えてくれるのだ。

「今日だって、話しかけてきた子がいたの。でも、そのこも怖い。あたしは誰も信じることが出来ないのよ。」

いくつかの雫が零れ落ちる。

そのたびに、頭を撫でてくれた。

「おばさ〜ん!」

胸に抱きついた。

わんわん小さい子供のように泣き叫ぶ。

「大丈夫。あたしがいるわ。」

微笑んだ顔は怖くない。

支えてくれる人はこの人だけ。

今までそうだった。


次の日。

いつものように窓辺に座りお気に入りの本を読む。

彼女はまたやってきた。

「紗夜ちゃん。」

昨日よりトーンが落ちてる。

彼女は傷ついただろうか?

「なに?」

「昨日はごめんね。」

「へっ?」

「なんか、酷くおびえてたみたい。」

「あ〜いいの。あたし、人が信じられないだけ。」

「怖いの?」

「怖いね。」

「人生に疲れてる顔してる。」

「へっ!?」

「生きるのが嫌なんでしょ。私も感じたことがある。」

「あんなに、友達に囲まれてるのに?」

「あんなの、関係ないよ。私、あの人たちを仲間と思えないもの。」

「どうして?」

「私も人が信じられないから。」

驚くべき真実。

「同じ?」

「同じだよ。」

「それは、悲しいことだね。」

つぶやいたときの顔。

すごく寂しそうで話してる。

あたしと、同じ人なんていてはいけない。

ましては、彼女は人を信じてあげなきゃ。

「でも、信じられそうな人はいるよ。」

「へっ?」

「紗夜ちゃん。」

「あたし!なんであたし?」

「同じものを感じたっていったら失礼だけど、それが逆に落ち着くの。」

「あはは。嬉しい。そんな事言ってもらえたの初めて。」

自然と流れる温かい雫。

泣けた。

幸せなひと時だった。

虹のように色が。

色の架け橋が出来てきてた。


そんなことを考えていた場所は廊下。

しかも、授業中。

ぼーっとしてて、ずーっとぼーっとしてて。

先生に怒られてるのも気づかないでいつのまにか廊下に居る。

きっとみんなは笑っただろう。

きっとまた、いじめる種が増えただろう。

でも、関係ない。

私は今、此処に居るのだから。

(ねぇ、友美。貴方にあえて嬉しかったのは私もだよ。)



退屈な授業。

私は早退した。

嘘ついて体調悪いまねして保健室行って摩擦で体温上げて家に帰らされた。

ぼーっとしてたのもその原因になった。

心底ラッキーだ。

「私も悪い奴よの〜。」

短いスカートをカバンで抑えながら靴を鳴らして歩いていく。

 コツッ コツッ

過去を語るのは何時だろう?

おばさんにまた会えるのはいつだろう?

途方もない願いが叶うのは何時だろう?

風が吹く。

冷たい季節。

なぜか浮かぶ奴の顔。

居ないときのが考える。

そんなとき、後ろから声が聞こえる。

「紗夜!」

息を切らして走ってきたのは総代。

「さっきまであんたのこと考えてたよ。」

「へっ?」

「なんでもない。で、何で居るの?」

「あ〜紗夜が帰ってるの見て。抜け出してきた。」

「はぁ?なんで私に構うかな?」

「好きだからって言ったら?」

「冗談辞めて。」

「じゃ〜本音。」

「なに?」

「興味があるから。」

「どこに?私の過去?」

「ちがう。紗夜自身だよ。」

「はぁ〜。」

飽きれた声がふさがれた。

奴の唇が重なってるから。

短く感じた恋しくなる様なキス。

「どう?キスしたいでしょ?」

こうなることを分かってた口調で話す。

「バッカ!」

ドキドキした顔を隠した。

君のせいで色づく世界が怖いよ。

「総代。」

「初めて名前呼んだね。」

嬉しそうに笑う顔は年下って感じ。

「・・・バイバイ。」

さよならの合図は心に言ったの?

君に言ったの?



私は、自分自身が一番分からないのだ。









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