モノクローム




〜第一話 ファーストキスの相手〜


世界は暗闇だった。

何も見えない。

ただ、ここに居るという自覚があるだけの人生。

空は雲に包まれた。

私は・・・人に見放された存在だった。

もう、ダレも愛さないと、恋をしないと決めて生きてた。

心が・・・決められていたから。



星が見えはじめてきた時間帯。

学校の帰り道だった。

人が多い道を通って孤独を感じてた。

スカートが短い。

風が冷たい。

人のマフラーが顔にぶつかる。

その人は気づくことなく進んでいく。

(私は・・・いてもいなくてもいい存在)

顔をうつむく。

下はコンクリート。

顔を上げれば暗い大きな闇。

私には、星がなかった。

「ねぇ?君にとってこの世界は暗闇に見えるんでしょ?」

上からさらに影が出来る。

「えっ?」

誰かも知らない人からの変な言葉。

ドキッとした。

心を見透かされてる気がしたから。

「当たり?」

ニヤッと笑う顔は悪魔。

そっと顔が近づく。

唇が触れた。

   バシッ!

顔を殴った。

思いっきり殴った。

知らない人はちょっとびっくり。

でも、かすかに微笑んでる。

「なにすんの!」

唇を隠した。

やつから一歩下がる。

じりじり迫ってくるからだ。

「俺、アンタの事知ってるよ?」

歩いてくる足は止まらない。

あたしは下がり続ける。

後ろにぶつかった。

「まぁ、そのうち俺の正体も分かると思うけどね!」

「はぁ?」

そっと握られたては温かい。

あたしの冷たい手とは大違い。

「さっきのキス。ファーストキスでしょ?ドキドキした?」

知らない男に奪われた口。

真っ赤になった。

「もう!ふざけないでよ!」

怒りが頂点に達して奴のすねを蹴った。

「いって〜っ!」

微笑が消えた。

奴は足を押さえてる。

きっととても痛かったのだろう。

そうして、あたしはそいつをそのままにして走って家に帰った。

人に何度もぶつかった感じがしたけどお構いなし。

逃げるようにしてその場を離れた。



家の明かりは灯っていない。

私は、一人暮らしをしている。

  カチッ

ドアを開けて家に電気をつける。

本当はドキドキしてた。

あいつの顔に見とれてた。

「バカバカ!騙されるな、騙されるな」

胸を押さえて息を吸う。

呼吸を整えた。

自分を抑えた。

きっと私には明るい未来なんてない。

そう思い続けてきた。

ずっと前から。

・・・・現在まで。




「守本 紗夜!」

先生の大きな声に呼ばれて寝ていたことに気づく。

「あっ・・・はい。」

先生はとても怒ってる。

後ろに変なオーラがでていた。

「帰りに職員室に来い!」

「はい」

何も言わない。

何もいえない。

先生がクラスを出て行った。

それを待っていたかのようにしゃべりだす生徒の声。

その話のだいたいは私のことだ。

『クスクス だっさ〜い!学校来るな〜』

『バカじゃん』

『殺人者!死ね!』

毎日聞く台詞。

もう慣れた。

  イヤデモナレルヨ



〜回想〜


人のために尽くしてきたつもりだった。

あまり中のよい友達は居なかった。

でも、支えてくれる友達はいた。

教室で本を読んでいるような性格。

だから、教室の掃除とかよくやってた。

でも、あの日と境にあたしは、あたしで居られなくなった。

「あっ!あたしのペンがない!」

昼休みを終えて戻ってきた生徒がいきなり叫んだ。

すぐさまみんなで探す。

でも、結局どこにもなくてクラスに居たあたしが疑われた。

「紗夜が盗ったんでしょ!」

掴みかかってきたその生徒。

ダレもあたしの見方なんてしてくれなかった。

ダレも何も言わないままあたしが犯人になった。

そうすれば、この面倒な事件から離れられるそう思ったんだ。

その日の帰り道からいじめられ始めた。

石は投げられる悪口は言われる。

でも、反撃なんて出来なかった。

35対1は辛かった。

先生も元気ではないあたしがやったと思って正直に言いなさい!とか、もう分かってるんだよとか決して本当のことを聞こうとしない。

だから、何も言わなかった。

それが、始まり。

中学2年の2学期だった。



〜回想終わり〜


帰り道が来た。

職員室に入る。

すぐさま説教。

おまえは弛んでるだのそんなんだからイジメラレルンダだの。

いじめられてることを知っていながら何もしない先生。

私はもう高校1年だ。

いじめになれた。

どうして他の高校に行かなかったの?

って悪口でよく言われる。

答えたことなんてない。

笑われると思ったから。

でも、一人だけ、教えた子が居た。

だけどその子はもう・・・。

「じゃ、これからは気をつけろよ!」

考え事をしているうちに説教は終わっていた。

「はい。」

適当に返事をして職員室から出る。

この高校は、中学部と高後部で受験しなくても高校にいけるのだ。

だから行った。

というのも理由である。

「守本さ〜ん」

不意に下から声が聞こえた。

廊下に居た私は窓を開けてしたみた。

私の名を呼ぶ人は少ないから。

そうして見た瞬間、見えた相手は・・・。

「げっ!」

昨日の唇を奪った相手!

「アンタ!年下だったの!」

思わずびっくりして大きな声で叫んでしまった。

昨日の相手は、逢沢 総代中学2年で女好きで有名だった。

そんなやつに・・・!

急に怒りがこみ上げてきて。

「この〜!変態!」

と窓から叫んだ。

廊下に居た生徒たちはびっくりしてた。

私がそういう風に怒るのを見たのはきっと初めてなのだろう。

そのまま窓を閉め走って帰った。

私の世界が色づくことはきっと・・・ない。



   ただ、黒と白の世界だけ











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